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アルトコインETFの奔流 ― SEC規制緩和と日本のFIEA改正が変える暗号資産市場の勢力図

米SECが2025年9月に導入した「一般上場基準」により、ソラナ・XRP・ドージコインなど主要アルトコインの現物ETFが相次いで上場した。ステーキング組み込み型商品の台頭、資金流入の序列、日本のFIEA改正によるETF解禁準備までを整理する。

Newscoda 編集部

概要

2025年後半、米国の暗号資産ETF市場は「ビットコイン一強」の段階から「アルトコイン群雄割拠」の段階へと移行した。転機となったのは、米証券取引委員会(SEC)が2025年9月17日に承認した現物コモディティ型ETP(上場投資証券)の「一般上場基準」である[1][2]。個別審査に240日以上を要していた上場プロセスが最短75日程度に短縮され、ソラナ・XRP・ドージコインなど複数のアルトコインを裏付けとする現物ETFが数週間の間に相次いで市場に登場した。日本でも2026年に入り、暗号資産を金融商品取引法(FIEA)上の金融商品として再分類し、国内でのETF組成を可能にする法改正が進んでいる[5][6]。本稿では、代表的なアルトコインETFの立ち上がりを項目別に整理し、共通点・相違点と今後の論点を検証する。

1. ソラナETF ― ステーキング組み込み型の先駆け

ソラナ(SOL)を裏付けとする現物ETFは、2025年10月28日にビットワイズ運用の「Bitwise Solana Staking ETF」がニューヨーク証券取引所で取引を開始したのを皮切りに、フィデリティなど複数の運用会社が追随した[3]。特徴的なのは、ファンドが保有するSOLの大部分をステーキングに回し、年率5〜7%程度とされるステーキング報酬を投資家に還元する設計である。従来のビットコインETFが「価格連動のみ」であったのに対し、ソラナ系ETFは現物保有とインカムゲインを組み合わせた点で商品性が異なる。

運用会社側は初年度に数十億ドル規模の資金流入を見込んでいたとされ、実際に取引開始直後から複数日にわたり継続的な資金流入が確認された[3]。ステーキング機能を組み込んだ設計は、今後上場が見込まれる他のプルーフ・オブ・ステーク系アルトコインETFの雛形になるとみられている。

2. XRP ETF ― 最速ペースで積み上がった資金流入

XRPを裏付けとするETFは、2025年11月13日のキャナリー・キャピタル運用商品の上場を起点に、ビットワイズ、グレースケール、フランクリン・テンプルトン、21シェアーズなど複数の発行体が同月中に相次いで上場させた[4]。初日の出来高が「2025年に上場した全資産クラスのETFの中で最大」と評された銘柄も現れるなど、ソラナ系ETF以上の速さで資金が集まった局面もあった。

XRPはこれまで、発行体リップル社と米SECとの間で長年係争が続いていた経緯があり、ETFという規制された器を通じて機関投資家がアクセスできるようになったこと自体が、暗号資産の「証券性」を巡る論争の一つの区切りと位置付けられている。ビットワイズは公式リリースで、XRPが「グローバル決済網の近代化を目指すプラットフォーム」への投資機会を提供するとして商品性を説明している[4]。

3. ドージコイン・その他アルトコインETF ― 商品化の裾野拡大

SECの一般上場基準は、ソラナ・XRPに続きドージコイン、ライトコイン、カルダノ、ヘデラ、アバランチ、チェーンリンクなど、より投機性の高いトークンを含む幅広い銘柄のETF申請にも適用された[1][2]。SECは基準承認と同時に、個別審査を前提としていたこれらの申請の取り下げを発行体に促し、新基準の下での再申請へと切り替えさせている。

ドージコインはもともとインターネット上のミーム(冗談)から生まれた通貨であり、企業の実需や技術的な裏付けに乏しいとの指摘が根強い。それでもETFという形式で上場された背景には、一般上場基準が「商品の性質」ではなく「先物市場での取引実績が半年以上あること」など形式的な要件を満たせば個別審査を経ずに上場できる仕組みに変わった点がある。市場関係者の間では、今後1年で100本規模の新規暗号資産ETFが上場する可能性があるとの見方も出ている。

4. 制度変化の起点 ― SECの「一般上場基準」

今回の一連の動きの出発点は、SECが2025年9月17日に承認した、ニューヨーク証券取引所・ナスダック・シカゴ・オプション取引所(Cboe)の3取引所による上場基準の統一化である[1][2]。従来は個別の証券取引所規則改正(19b-4)を経て、案件ごとに数カ月から1年超の審査期間を要していたが、新基準では取引対象が「異業種監視グループ(ISG)加盟の市場」で取引され、かつ「商品先物取引委員会(CFTC)の規制下にある先物市場で6カ月以上取引されている」などの要件を満たせば、取引所の判断で個別審査なしに上場できるようになった。

SEC内部でも評価は一様ではない。ポール・アトキンス委員長は投資家の選択肢拡大を強調し、ヘスター・パース委員も制度整備を支持した一方、キャロライン・クレンショー委員は「投資家保護の判断を取引所に丸投げすることになる」との懸念を表明した[1]。制度の恩恵とリスクの両面が、承認当日から指摘されていたことになる。

5. 日本の追随 ― FIEA改正と金融庁のロードマップ

日本では、金融庁の金融審議会が2025年12月10日に暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告をまとめ、暗号資産を資金決済法上の「暗号資産」から金融商品取引法(FIEA)上の金融商品へと位置付け直す方向性を示した[5]。これを受けて2026年4月には、FIEAおよび資金決済法の一部改正法案の説明資料が公表されている[6]。国会審議を経て法案は成立し、暗号資産は株式・投資信託と同じ法体系の下で扱われる金融商品として再整理される見通しとなった。

この再分類が実現すれば、年金基金や保険会社など機関投資家が既存のコンプライアンス体制のまま暗号資産関連商品にアクセスできる環境が整う。日本国内での暗号資産ETF組成・上場は、税制の見直し(暗号資産ETF収益の分離課税化の検討を含む)とあわせて議論が進められている段階であり、規制の詳細を含む論点は日本の暗号資産・Web3規制の枠組みで整理した制度改革の延長線上にある。

共通点と相違点

項目ビットコインETF(既存)ソラナETFXRP ETF
上場開始時期(米国)2024年1月2025年10月2025年11月
ステーキング機能なしあり(一部商品)なし
主な発行体ブラックロック等ビットワイズ、フィデリティキャナリー、ビットワイズ、グレースケール
主な訴求ポイント価格連動・流動性インカムゲイン決済網としての実需訴求

ソラナ系とXRP系のETFに共通するのは、SECの一般上場基準という同一の制度変化を起点に、数週間という短期間で複数の発行体が競うように上場させた点である。相違点は商品設計にある。ソラナ系はステーキング報酬という「利回り」を前面に出す一方、XRP系は決済ネットワークとしての実需や、リップル社と規制当局との係争終結という物語性を訴求している。いずれもビットコインの機関投資家取り込みで先行した「ETFという規制された器を通じた資金流入」という構図を踏襲しているが、裏付け資産の値動きの荒さはビットコインより大きく、資金流出入の振れ幅も相応に大きくなりやすい。

注意点・展望

第一に、一般上場基準は「上場のしやすさ」を高めた制度であって、裏付け資産そのものの価格変動リスクや流動性リスクを軽減するものではない。ドージコインのように実需の乏しい銘柄までETF化が進むことで、投資家が商品性の違いを十分に理解しないまま資金を投じる懸念が指摘されている。第二に、ステーキング組み込み型ETFは、バリデータの不正やスラッシング(罰則的な没収)といった、伝統的な現物ETFにはないオペレーショナルリスクを内包する。第三に、日本の制度改正は法案成立後も政省令の整備や取引所側のシステム対応が必要であり、国内での暗号資産ETF上場が実際に始まるまでには相応の期間を要する見通しである。

規制アプローチという点では、欧州がMiCA(暗号資産市場規制)によって発行体・サービス提供者を包括的に規制する方式を採るのに対し、米国は上場基準の緩和による「市場アクセスの拡大」を軸に据え、日本は既存の金融商品取引法の枠組みへの統合を選んだ。3極の制度設計の違いは、今後の資金フローがどの市場に集中するかを左右する要因になり得る。

Newscoda の見方

本サイトが注目するのは、ETFという伝統的な投資商品の器を通じて、規制上のグレーゾーンにあった資産が急速に機関投資家向け市場へ組み込まれつつある構造そのものである。一般上場基準は審査の迅速化という技術的な変更に見えるが、実質的には「どの資産をETF化してよいか」の判断を規制当局から取引所に移す制度転換であり、投資家保護の水準がどう維持されるかは今後の運用実績で検証される必要がある。他の論者がしばしば個別銘柄の値上がり期待に焦点を当てるのに対し、本サイトはむしろ制度設計の変化と、それに対する各国の規制対応の差異を軸に据える。

今後6〜12か月で観察すべき変数は次の通りである。

  • 一般上場基準の下で実際に上場するアルトコインETFの本数と、発行体間の競争によるコスト(手数料)低下の程度
  • ステーキング組み込み型ETFにおけるバリデータリスクの顕在化事例の有無
  • 日本のFIEA改正法の施行細則と、国内取引所における暗号資産ETF上場準備の進捗
  • SECの投資家保護に関する事後的な検証や、クレンショー委員が指摘した懸念が現実化するかどうか

まとめ

米SECが2025年9月に導入した一般上場基準は、ソラナ・XRP・ドージコインなど幅広いアルトコインの現物ETF上場を数週間のうちに実現させ、暗号資産ETF市場を「ビットコイン一強」から「アルトコイン群雄割拠」の段階へと押し上げた。ステーキング組み込み型商品の登場は運用商品としての新しい設計を示す一方、投資家保護やオペレーショナルリスクを巡る論点も同時に浮上している。日本はFIEA改正によって暗号資産を金融商品として再定義し、機関投資家がアクセスしやすい制度基盤を整えつつある段階にあり、米欧日それぞれの制度設計の違いが、今後の資金フローの行方を左右する構図が続く見通しである。

Sources

  1. [1]Reuters — SEC paves way for crypto spot ETFs with new listing rules
  2. [2]U.S. Securities and Exchange Commission — SEC Approves Generic Listing Standards for Commodity-Based Trust Shares
  3. [3]Fortune — Crypto's second wave of ETFs arrives as investors snap up new Solana offering
  4. [4]PR Newswire — The Bitwise XRP ETF (Ticker: XRP) Launches on NYSE
  5. [5]金融庁 — 金融審議会 資料(暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告)
  6. [6]金融庁 — 国会提出法案説明資料

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