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コインランドリー店舗数がクリーニング店を逆転、成長期から成熟期への転換点

国内コインランドリーはこの10年で店舗数が4割増え、クリーニング店を上回った。共働き世帯の時短需要が支えた拡大が、好立地飽和による鈍化局面に入った構造を読み解く。

Newscoda 編集部

はじめに

洗濯を自宅で完結させず、街のコインランドリーに委ねる暮らし方が日本で定着しつつある。厚生労働省が公表する統計をもとにした報道・業界推計によれば、国内のコインランドリー店舗数はこの10年でおよそ4割増加し、店舗数ベースでクリーニング店(クリーニング所)を上回る規模に達したとされる。一方で、クリーニング所施設数は減少が続いており、令和5年度末時点で全国72,936施設と前年度比4.4%減少した [1]。厚生労働省が長年公表してきた生活衛生関係営業施設数の統計でも、クリーニング所は縮小、コインランドリーに代表されるコインオペレーションクリーニング営業施設は一貫して増加するという対照的な傾向が続いてきた [2]。無店舗取次店を含む数値ではあるものの、街の洗濯業の担い手が「取次・仕上げ型のクリーニング店」から「利用者自身が洗う自動化店舗」へと移行してきた流れを裏付ける数字だ。

この二つの業態の明暗は、単なる好みの変化にとどまらない。クリーニング店は店員による受付・仕上げ・保管という労働集約的なサービスを提供する一方、コインランドリーは機器の設置とメンテナンスを除けば無人で運営できる。人手不足が深刻化するサービス業全体の中で、労働投入量の少ない業態が相対的に出店しやすかったという構造も、この逆転現象の背景にあるとみられる。

この拡大を後押ししてきたのは、共働き世帯の増加に伴う時短需要と、布団やアレルギー対策としての大型洗濯ニーズだった。しかし近年、出店の伸び率は鈍化しつつある。背景にあるのは、好立地の減少と店舗数増加に伴う1店舗あたり来店客数の低下である。本稿では、コインランドリー市場が拡大期から成熟期へと移行しつつある構造を、不動産投資対象としての側面とフランチャイズ経営の観点を交えて整理する。

市場拡大を支えた3つの要因

共働き世帯の時短需要

コインランドリー市場拡大の最大の要因は、共働き世帯の増加である。労働政策研究・研修機構(JILPT)が総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」を基に整理したデータによれば、2024年の共働き世帯数は1,300万世帯に達し、専業主婦世帯508万世帯の2.6倍近くに拡大している。共働き世帯は前年から22万世帯増加した一方、専業主婦世帯は9万世帯減少しており、両者の差は年々広がる傾向にある [3]。内閣府男女共同参画局の整理では、雇用者の共働き世帯数が専業主婦世帯を上回ったのは平成9(1997)年で、平成24(2012)年頃から差が急速に拡大したとされる [5]。

共働き世帯の増加は、家事に充てられる時間の制約を強める。総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によれば、有業者の家事関連時間には男女差が残るものの、共働き世帯では夫婦双方が仕事に多くの時間を割かざるを得ず、家事全体の効率化が課題になっている [4]。こうした時間制約の中で、洗濯という家事のうち「洗う・乾かす・畳む」という一連の作業を一括して外部化できるコインランドリーは、かつては学生や単身者向けの施設という位置づけから、時短を重視する共働き世帯の受け皿へと利用者層の重心を移してきた。「タイパ(時間対効果)」を重視する共働き世帯にとって、洗濯という家事を一括して外部化できる合理的な選択肢として定着した構図は、共働き世帯の急増という需要側の変化と軌を一にしている。

大型洗濯ニーズ(布団・アレルギー対策)

もう一つの拡大要因は、家庭用洗濯機では扱いきれない大型・特殊洗濯物への需要である。布団やこたつ布団、毛布、大型のラグやカーテンといった寝具・繊維製品は、家庭用洗濯機の容量を超えることが多く、従来はクリーニング店への依頼か、天日干しによる対応が一般的だった。しかし近年は、アレルギー対策としてダニやハウスダストを高温・大容量で丸洗いしたいというニーズが強まっており、業務用の大型洗濯乾燥機を備えるコインランドリーがその受け皿になっている。

また、水洗い可能な素材のスーツやコートが普及したことで、従来はドライクリーニングに出していた衣類の一部が家庭洗濯・コインランドリー洗濯へとシフトしたことも、需要拡大を後押しする構造変化の一つとみられる。高温乾燥による殺菌効果や、一度に大量の洗濯物を処理できる利便性が、共働き世帯の週末まとめ洗いという利用パターンと結び付き、単なる「洗濯機を持たない人向けの施設」から「家庭の洗濯機を補完する高機能インフラ」へと役割を広げてきた。

こうした需要の広がりは、利用者層の変化にも表れている。かつては単身世帯や学生が中心だったコインランドリーの利用者に、子育て世帯や共働きの主婦・主夫層が加わったことで、店舗設計自体も変化した。清潔感や防犯性を重視した明るい内装、キッズスペースやWi-Fi、待ち時間を快適に過ごせる休憩スペースを備えた店舗が増えたのは、こうした利用者層の多様化を映した結果といえる。

出店競争の実態

好立地の飽和と1店舗あたり収益の低下

もっとも、この拡大局面は近年、明確に減速の兆しを見せている。要因は主に二つある。第一に、コインランドリーは駐車場を確保しやすい幹線道路沿いや住宅街の空き地など、限られた条件の立地に依存する業態であり、出店が進むほど条件の良い物件から先に埋まっていく。第二に、店舗数の増加そのものが商圏内の需要を分散させ、既存店の1店舗あたり来店客数を押し下げる方向に働く。新規出店が近隣の既存店から利用者を奪う「カニバリゼーション」が生じやすく、エリア全体の店舗密度が一定の水準を超えると、新規出店の期待収益は逓減していく。

この構造変化は、東証グロース市場に上場するコインランドリー専業のWASHハウス株式会社の開示にも表れている。同社は2023年12月期に新規出店計画を当初の35店舗から2店舗へと大幅に下方修正した。理由として、行動制限の解除後に飲食店など他業種による新規出店が活発化し、採算の見込める好立地の物件確保が難しくなったことを挙げている [6]。これは個社の一時的な事情にとどまらず、無人運営で低コスト出店が可能だったコインランドリー業態が、他業種と物件を奪い合う競争環境に入ったことを示す一例といえる。

コインランドリーはこれまで、飲食店や物販店に比べて内装コストや必要坪数の自由度が高く、駐車場付きの郊外型物件であれば比較的短期間で開業できる点が出店拡大を後押ししてきた。しかし、その「出店しやすさ」自体が同業他社の参入も呼び込み、結果として好条件の空き地・低利用地から順に開発が進む形になった。都市部近郊のロードサイドや住宅密集地周辺では、店舗同士の距離が数百メートル単位まで縮まっている地域も珍しくなく、単純な店舗網拡大による成長は物理的な限界に近づきつつある。

フランチャイズ経営の収益構造

コインランドリーは、飲食業や小売業と異なり、店舗運営の大半が無人で完結する点が投資対象・フランチャイズ事業としての特徴になってきた。フランチャイズ本部が土地取得・機器導入・遠隔監視システムの構築を支援し、オーナーは初期投資と機器リース料・ロイヤルティを負担しつつ、日々の接客・在庫管理といった労務負担を負わない仕組みが一般的である。この「省人化された不動産投資」としての性格が、店舗経営の経験がない個人オーナーや、遊休地を持つ地主層を惹きつけてきた。

一方で、この収益構造は立地選定の巧拙に強く依存する。売上の大半は洗濯・乾燥機の稼働率に規定され、価格競争力を左右する電気・ガス・水道料金の変動や、近隣への競合出店の影響を直接受けやすい。中小の個人オーナーが多いこの業態では、後継者不在や高齢化により経営継続が難しくなるオーナーも増えており、後継者不在に直面する中小企業が抱える課題と同様に、事業の譲渡・売却といった出口戦略の整備が今後の論点になり得る。フランチャイズ本部にとっても、新規出店の鈍化局面では、既存オーナーの店舗リニューアル支援や複数店舗展開の後押しが、成長戦略の中心に移りつつある。

成熟期に向けた差別化戦略

高付加価値サービスへのシフト

出店による店舗数拡大だけでは収益を伸ばしにくくなる中、業界の関心は「1店舗あたりの収益性をどう高めるか」という差別化戦略に移っている。具体的には、スマートフォンアプリによる空き台数の確認・遠隔予約、ポイント還元やキャッシュレス決済の導入、宅配クリーニングとの連携、靴やスニーカー専用の洗浄機導入など、洗濯という単一機能から周辺サービスへの拡張が進んでいる。

こうした高付加価値化の方向性は、規模の勝負ではなくニッチな機能特化で競争力を確保しようとする姿勢という点で、グローバルニッチ市場で高いシェアを握る中堅製造業が採る戦略と共通する側面がある。コインランドリーの場合、対象はグローバル市場ではなく徒歩・車での来店圏に限られるが、限られた商圏の中でいかに差別化された機能・体験を提供できるかが、価格競争に陥らないための鍵になっている点は共通する。

異業種併設・複合店舗化

もう一つの潮流が、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、カフェ、フィットネスジムなど、異業種との複合店舗化である。買い物や運動といった別の目的のついでに洗濯を済ませられる動線を作ることで、単独立地では確保しにくかった集客力を補う狙いがある。小売業界では、単独店舗での競争が限界を迎える中、大手チェーンが再編や業態転換を進める動きが顕在化しており、日本の小売再編が示す資本戦略の分岐とも軌を一にする形で、コインランドリー業界でも単独立地依存からの脱却が模索されている。

複合店舗化は、コインランドリー単独では出店が難しかった商業施設内や駅前立地への進出を可能にする一方、賃料水準が相対的に高くなるため、稼働率と客単価をどう両立させるかという新たな採算管理の課題も生む。無人運営という強みを保ちながら、他業態との協業でいかに来店動機を増やせるかが、今後の出店戦略の焦点になるとみられる。

注意点・展望

成熟期への移行が進む中で留意すべき点はいくつかある。第一に、店舗数の伸び率鈍化は市場全体の縮小を意味するものではなく、既存店の稼働率向上や単価上昇によって市場規模自体は緩やかな拡大を続ける可能性がある。第二に、不動産投資対象としてのコインランドリーは、土地の遊休活用という側面から根強い需要があるものの、好立地の希少化により期待利回りは徐々に低下していくと見込まれ、投資判断における立地評価の精度がこれまで以上に重要になる。第三に、電気・水道料金など運営コストの変動は、無人運営で価格改定のタイミングが顧客に敏感に受け止められやすい業態特性上、収益を圧迫する要因になり得る。

フランチャイズ本部にとっては、新規出店による店舗数拡大というこれまでの成長モデルから、既存店の付加価値向上と複合店舗化による差別化へと重心を移す転換期にある。この転換をどれだけ早く実行できるかが、成熟期における各社の明暗を分けることになりそうだ。

さらに、共働き世帯の増加という需要側の追い風がいつまで続くかも不確実性の一つである。労働力人口全体の伸びが鈍化し、女性の就業率上昇にもいずれ天井が見えてくるとすれば、コインランドリー利用の裾野拡大も緩やかになっていく可能性がある。需要の追い風と立地制約という二つの変数がどう交差するかが、この先の市場規模を規定することになる。

Newscoda の見方

本サイトが注目するのは、コインランドリー市場の減速が「需要の頭打ち」ではなく「立地という有限資源の制約」に起因している点である。共働き世帯の増加という需要側の追い風は今後も続くとみられる一方、店舗網の拡大は不動産という物理的制約に規定される。この非対称性は、他の店舗ビジネスにも共通する成熟期の典型的な構図であり、コインランドリー市場はその縮図として観察する価値がある。

他の解説の多くが店舗数や市場規模といった総量指標に焦点を当てるのに対し、Newscodaとしては、フランチャイズオーナーという個人投資家層の収益構造と、事業承継・出口戦略の欠如という論点を重視する。無人運営という省力化モデルが、逆に経営者の高齢化や後継者不在という中小企業共通の課題を見えにくくしている可能性がある点は、見落とされやすい視点だ。

今後6〜12か月で観察すべき変数:

  • 主要フランチャイズ本部の新規出店計画達成率と下方修正の有無
  • 既存店売上・稼働率の推移(前年同期比)
  • 複合店舗化・異業種併設の具体事例の広がり
  • 電気・水道料金など運営コストの変動が価格転嫁に与える影響
  • 個人オーナーの事業承継・店舗売却案件の増減

まとめ

コインランドリー市場は、共働き世帯の時短需要と大型洗濯ニーズを追い風に、この10年で店舗数を4割拡大させ、クリーニング店を上回る規模に達した。しかし好立地の飽和と1店舗あたり収益の低下により、出店による量的拡大には限界が見え始めている。今後は、アプリ連携や宅配クリーニングとの融合といった高付加価値サービス、コンビニやスーパーとの複合店舗化といった差別化戦略が、成熟期における各社の競争力を左右する。不動産投資・フランチャイズ経営の両面から見て、コインランドリー業界は「量から質へ」の転換点に立っている。

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Sources

  1. [1]令和5年度衛生行政報告例の概況 — 厚生労働省
  2. [2]衛生行政報告例(抜粋)生活衛生関係営業施設数の推移 — 厚生労働省
  3. [3]共働き世帯の状況(ちょっと気になるデータ:ビジネス・レーバー・トレンド2025年4月号)— 労働政策研究・研修機構(JILPT)
  4. [4]令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の要約 — 総務省統計局
  5. [5]男女共同参画白書 令和2年版(共働き世帯数の推移)— 内閣府男女共同参画局
  6. [6]IR情報 — WASHハウス株式会社

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