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ファーウェイが仕掛ける自動運転の外販戦略、車を作らずに勝つという道

米国の制裁下でスマートフォン事業が制約されるなか、ファーウェイは自動運転ソフトウェアの外販モデルで存在感を拡大している。「車を作らない」戦略の狙いと海外展開の実像を整理する。

Newscoda 編集部

ファーウェイの自動運転事業とは

ファーウェイは、自動運転・スマートコックピット向けソフトウェアブランド「乾崑(Qiankun)」を軸に、自動車メーカー向けの技術外販事業を急速に拡大している。同事業を担う「インテリジェント・オートモーティブ・ソリューション(IAS)」事業部門は分社化され、スマート電気自動車向けソフトウェア・部品の主要サプライヤーになることを目指しており、その企業価値は280億〜350億ドルと評価されている[3]。スマートフォン・5G分野での輸出規制下での事業立て直しについては、米制裁下で存在感を増すファーウェイもあわせて参照されたい。

ファーウェイ自身は自動車を製造せず、先進運転支援システム(ADAS)から自動運転(ADS)までの技術を、完成車メーカーに供給するモデルを採っている。この技術は比亜迪(BYD)・東風汽車・広汽集団(GAC)・長安汽車・北京汽車(BAIC)など少なくとも7社の中国系自動車メーカーに搭載されているほか、独フォルクスワーゲン傘下のアウディとも提携し、中国向けQ6L e-tronに搭載する契約を結んでいる。これはファーウェイにとって海外メーカーとの初の本格提携となった[3]。

ファーウェイはさらに、自社が主導する「ハーモニー・インテリジェント・モビリティ・アライアンス(HIMA)」という枠組みを通じて、賽力斯(セレス/AITO)や奇瑞汽車、江淮汽車(JAC)など複数の自動車ブランドと共同で車両を開発・展開している。HIMA参加ブランドの車両は年間数十万台規模の販売実績を積み上げており、ソフトウェア・コネクティビティ・自動運転機能を統一のエコシステムで提供する点を差別化要素として打ち出している。この「一つの技術基盤を複数のブランドで共有する」というアプローチ自体が、単独ブランドで開発から販売までを垂直統合する従来型の自動車メーカーとは異なる事業構造を体現している。

なぜ急拡大しているか

制裁下でのソフトウェア外販モデルへの転換

ファーウェイは米国による対中輸出規制の影響でスマートフォン・通信機器事業に制約を受けてきた経緯がある。この状況下で、自動車のソフトウェア・部品供給という新たな収益源に経営資源を振り向ける動きが加速している。完成車を自ら製造せず技術を外販する方式は、既存の自動車メーカーとの直接競合を避けながら市場を広げられる利点があり、これまで7社以上の中国系メーカーとの提携につながっている[3]。

あわせてファーウェイは、独メルセデス・ベンツやアウディに対し、自動車ソフトウェア子会社への少額出資を打診したことが報じられている。メルセデス側には3〜5%程度の株式取得が提案されたとされるが、自社ブランドの独自性を保つためソフトウェアを外部に委ねることに慎重な姿勢を示しているという[3]。外資の受け入れは、単なる資金調達にとどまらず、地政学的な緊張が高まった場合に事業を保護し、中国系サプライヤーへの警戒感が強い欧米市場での商流を確保する狙いがあるとみられる。

投資規模の面でも、ファーウェイは自動運転関連に巨額の資金を投じている。同社は自動運転モデルの学習(オートパイロット・トレーニング)に117億ドル規模を投じる計画を明らかにしており、これは通信機器・スマートフォン事業で培った技術力と資金力を自動車分野に本格的に振り向ける姿勢の表れといえる[2]。この投資規模は、自動運転を単なる周辺事業ではなく、次の成長の柱として位置づけていることを示している。

政府の後押しと国内市場の需要

中国国内では、自動運転車の実用化に向けた規制整備が段階的に進んでいる。工業和信息化部(MIIT)は2025年12月、長安汽車とBAIC傘下アークフォックスの2車種について、レベル3(条件付き自動運転)機能を条件付きで初めて承認し、北京・重慶の指定区域での走行試験を認めた[4]。長安ブランドの車両は渋滞時の高速道路・都市高速での単一車線内自動運転(最高時速50km)が、アークフォックスの車両は同様の条件下で最高時速80kmでの自動運転が認められており、いずれも指定区間に限定した実証というかたちで商用化への一歩を踏み出している[4]。中国政府はレベル3・レベル4に関する安全基準の整備も進めており、2027年7月までの施行を目指す新たな草案を公表している[4]。こうした規制の段階的な緩和が、ファーウェイを含む智能運転関連企業にとっての追い風となっている。

背景には、世界最大の新エネルギー車(NEV)市場を抱える中国において、スマート運転機能が新車購入時の主要な訴求点になっているという市場構造もある。価格競争が激化するEV市場において、自動運転関連の機能は数少ない差別化要素の一つとなっており、自社開発が難しい中堅メーカーほど、ファーウェイのような外部サプライヤーの技術を採用する動機が強い。

誰が影響を受けるか

中国系・海外自動車メーカーへの影響

ファーウェイと提携する自動車メーカーにとっては、自社で自動運転技術を一から開発するコストと時間を節約できる利点がある一方、コア技術をファーウェイに依存することへの懸念も残る。実際にメルセデスが出資提案に慎重な姿勢を示したように、プレミアムブランドほど「自社のソフトウェアの独自性」を重視し、外部サプライヤーへの依存を避けたいという緊張関係が存在する[3]。

中国国内の中堅・新興自動車メーカーにとっては事情が異なる。自前で自動運転技術を開発する体力を持たない企業ほど、ファーウェイの技術を採用することで大手メーカーと同等の機能を短期間で搭載でき、競争上の遅れを取り戻せる利点が大きい。この結果、ファーウェイの技術を軸に据えたブランド間で、価格帯や訴求点こそ異なるものの、基盤となる自動運転機能は共通化が進むという構図が生まれつつある。

世界の自動運転レースへの影響

世界的に見ると、自動運転車の商用化競争は米国のテスラ・ウェイモと中国勢の間で激化している。中国の百度(Apollo Go)・文遠知行(WeRide)・小馬智行(Pony.ai)・滴滴自動運転(DiDi Autonomous Driving)などのロボタクシー各社は、国内での実証を積み重ねたうえで、ドバイ・アブダビ・シンガポールなどへの進出を進め、ドイツや英国などの欧州市場への展開も視野に入れている[1]。商用化の技術的な到達点については、自動運転車の商用展開が広がる国際的な現状も参照されたい。ファーウェイの技術を搭載する広汽集団のAion車両も、DiDi Autonomous Drivingとの提携を通じてアラブ首長国連邦(UAE)向けロボタクシー展開の一翼を担っており、これが同社の技術にとって初の本格的な海外進出の足がかりとなっている[5]。

今後どうなるか

短期の見通し — 海外市場開拓の実像

短期的には、ファーウェイの自動運転技術の主戦場は引き続き中国国内にとどまるとみられる。海外展開はUAEなど一部地域での実証段階にあり、欧州や北米市場への本格進出には、各国の型式認証や自動運転関連規制への対応という高いハードルが残る。アウディとの提携も、当面は中国国内向け車種への搭載にとどまっており、グローバル市場での存在感はこれからの課題である。中国系EVメーカーの海外現地生産・関税対応の動向は、中国EVメーカーの海外現地化戦略とも密接に関わる論点であり、自動運転技術の輸出も同様の関税・規制の壁に直面する可能性がある。

中長期の構造変化 — グローバル標準争い

中長期的には、レベル3・レベル4の実用化が世界各地で進むなかで、自動運転技術を「自社開発」するか「外部から調達」するかという選択が、自動車メーカーの経営戦略における重要な分岐点になるとみられる。ファーウェイのような外販型サプライヤーが提供する技術が業界標準になれば、自動車メーカー間の技術力の差は縮小する一方、サプライヤーへの依存度は高まる。IAS事業部門への外資の受け入れが進めば、地政学的な制約を回避しながら海外展開を加速する道も開けるが、実現には時間を要するとみられる。

もう一つの分岐点は、中国と米欧のあいだで自動運転車の安全基準・データ管理規制が異なる方向に発展した場合の影響である。中国国内向けに最適化された技術がそのまま海外で通用するとは限らず、各国の型式認証や個人情報保護規制に合わせた再設計が必要になる可能性が高い。ファーウェイがこの調整コストをどこまで負担できるかが、同社の技術が真にグローバルな標準になり得るかを左右する。

Newscoda の見方

本サイトとして注目するのは、ファーウェイが「車を作らずに自動車産業の中核技術を握る」という、垂直統合型のテスラとは対照的な戦略を採っている点だ。この水平分業モデルが成功すれば、資本力に乏しい中堅自動車メーカーでも高度な自動運転技術を搭載できるようになり、業界の競争構造そのものが変化する可能性がある。

多くの報道はファーウェイと中国政府の関係や輸出規制の効果に焦点を当てがちだが、Newscodaとしては、自動車メーカー側が「技術の独自性」と「開発コストの節約」のどちらを優先するかという経営判断の分岐に注目する。メルセデスの慎重姿勢とアウディの提携という対照的な対応は、プレミアムブランドと量産ブランドとで異なる計算が働いていることを示唆しており、この選択の違いが今後の自動車産業の勢力図を左右する可能性がある。

今後6〜12か月で観察すべき変数:

  • ファーウェイIAS事業部門への外資出資交渉の進展
  • 中国国内でのレベル3・レベル4車両の承認車種数の拡大
  • UAE以外の海外市場でのファーウェイ搭載車両の実証・販売実績
  • 欧米自動車メーカーによるファーウェイ技術採用の有無

まとめ

ファーウェイは、米国の制裁下でスマートフォン・通信機器事業が制約を受けるなか、自動運転ソフトウェアの外販という新たな事業モデルで存在感を拡大している。中国系メーカーとの提携を軸に据えつつ、アウディとの提携や外資受け入れの模索を通じて海外展開の足がかりを探る動きは、車を作らずに自動車産業の中核技術を握るという戦略の実験場となっている。中国国内での規制緩和とロボタクシー各社の海外進出が並行して進むなかで、ファーウェイの技術がどこまでグローバルな存在感を持てるかが、今後の焦点となる。

Sources

  1. [1]Chinese Robotaxis Race Waymo to Take Driverless Cars Global — Bloomberg
  2. [2]Huawei doubles down on autonomous driving, earmarking US$11.7b for autopilot training — South China Morning Post
  3. [3]Huawei's smart car tech offers automakers route to China sales — Automotive News
  4. [4]China approves first L3 autonomous passenger cars for limited public deployment — Gasgoo
  5. [5]DiDi Autonomous Driving targets UAE as first overseas robotaxi hub — Gasgoo

よくある質問

ファーウェイの自動運転ブランド「乾崑(Qiankun)」とは何か?
乾崑はファーウェイが展開する自動運転・スマートカー向けソフトウェアブランドで、先進運転支援システム(ADAS)から自動運転(ADS)までを含む。自社で完成車を作らず、自動車メーカーに技術を外販する方式を取っている[3]。
なぜファーウェイは自ら車を作らずソフトウェアを外販するのか?
完成車メーカーとの直接競合を避けつつ、中国系・海外双方の自動車メーカーに技術を供給することで市場を広げる狙いがある。あわせて外部資本の受け入れにより、地政学リスクへの耐性を高める意図もあるとみられる[2][3]。
ファーウェイの自動運転技術は中国以外の海外市場にも展開されているか?
主戦場は依然として中国国内だが、提携先の完成車メーカーを通じて中東など一部地域への輸出が始まっている。ただし米欧市場への本格展開はまだ限定的である[1][5]。
中国国内における自動運転をめぐる規制環境は最近どう変化しているか?
中国工業和信息化部(MIIT)は2025年12月、レベル3(条件付き自動運転)の車両を初めて条件付きで承認し、指定区域での走行試験を認めた。段階的な規制緩和が進んでいる[4]。

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